開業装蹄師の親方の元で9年ほど働いていましたが、新たな環境に身を置きたいと考えていたところ、JRAのホームページで装蹄職の募集を見つけ応募しました。
入会の動機は?
装蹄とはどういうものですか?
装蹄とは、馬の蹄を保護するために蹄鉄を蹄に装着する作業のことです。私は競走馬診療所に所属しており、競走馬や乗馬の装蹄を主に行っています。
仕事の具体的な内容は?
主に午前は乗馬苑で本会所属の乗馬の装蹄を行い、午後は依頼された厩舎へ出向いて競走馬の装蹄を行っています。必要に応じて病馬に対しての装蹄療法を実施することもあります。また、開業装蹄師から提出される書類の管理など事務的な業務も行っています。
装蹄で心がけていることは?
競走馬は蹄の質が脆く薄いことが多いため、厩舎関係者と相談しながら馬にとって負担のない装蹄をできるように心がけています。また、若手の技術的な引出しを増やせるように、自分の学んできた技術を少しでも伝えられればと思い、積極的に声をかけるようにしています。
どんなことにやりがいを感じていますか?
状態の悪い蹄を「いかにして良い状態に戻してあげるのか」と考えながら作業することです。競馬に向かう最前線のトレセンで、現役の競走馬に接することにもやりがいを感じます。
競馬場での開催業務について教えてください。
トレセン勤務の装蹄職は、主に蹄鉄検査係、馬房割当係として装鞍所で執務することが多くなります。出走馬が装鞍所に入所する際に、蹄鉄が競走に使用できるものであることを確認し、その装着状態についてもチェックを行います。装着状態が不良である(蹄鉄がずれていたり、釘が飛び出ているなど)ものを見つけた場合には、蹄鉄の打ち直しを行います。装着状態が不良のまま出走すると、落鉄する恐れがあるだけではなく、肢を引っかけて負傷したり、他馬を傷つける恐れもあります。そういった事故を未然に防げるように、装鞍所では馬の肢元に目を光らせています。
これまででいちばん印象深かったことは?
トレセン所属の本会の装蹄師は診療所所属ということもあり、獣医師と連携し病馬の治療にあたることも多くあります。四肢の蹄が大きく欠損してしまい跛行していた馬が装蹄療法によって回復し、1年後に競走復帰を果たした際には大変うれしかったです。
皆さんへのメッセージ
『No Hoof, No Horse』といわれるように、蹄がなければ馬は生きていけません。装蹄師という仕事は裏方であり、あまり日の目を見ることはありませんが、蹄を守るためにはなくてはならない仕事だと自負しています。1頭の馬でも4蹄全ての形が違っているため、それぞれにあった蹄鉄を作り装着することは簡単ではありません。しかし簡単ではないからこそ、そこにこの仕事の面白さが詰まっています。馬の仕事に携わってみたいとお考えの方は、装蹄師という道もあることを覚えておいていただければ幸いです。